本記事では、FXの「通貨ペア」について解説します。通貨ペアの種類や、メジャー通貨とマイナー通貨の違い、おすすめの通貨ペアの選び方なども紹介しますので、これからFXを始める初心者の方は参考にしてください。
FXの通貨ペアとは?
FXは、2国間の通貨を売買して生じた差額によって収益を得る取引です。「通貨ペア」とは売買する通貨の組み合わせのことを指します。
「米ドル/円」「ユーロ/円」のように、売買する通貨の組み合わせを「/」で区切って表記するのが特徴です。たとえば「米ドル/円を買う」と表現した場合には「米ドルを買い、円を売る」といった意味となり、「米ドル/円を売る」と表現した場合には「米ドルを売り、円を買う」といった意味となります。
株式や投資信託などで資産運用をするときに銘柄を選ぶのと同様に、FXでも取引を始める際にまずは通貨ペアを選択しなければなりません。FXには「米ドル/円」以外にもさまざまな通貨ペアがあります。どの通貨ペアを選ぶべきか判断できるようになるためにも、基礎知識を学んでおきましょう。
基軸通貨とは
基軸通貨とは、売買の対象となる通貨です。「取引通貨」と呼ばれることもあり、通貨ペアの「/」の左側にある通貨が基軸通貨に該当します。
たとえば「米ドル/円」の場合「米ドル」が基軸通貨です。
決済通貨とは
決済通貨とは、通貨ペアの「/」の右側にある通貨です。FXの売買によって発生する損益は、決済通貨建てで発生します。たとえば「米ドル/円」の場合、「円」が決済通貨となるため、損益は日本円で受け取ることになります。一方「ユーロ/米ドル」を取引した場合、「米ドル」が決済通貨となるため、損益は米ドルで発生するといった仕組みです。
FXの通貨ペアの種類
FXの通貨ペアは「ストレート通貨」と「クロス通貨」の2種類に大きく分けられます。ここではそれぞれの特徴を解説しますので、通貨ペアを選ぶ前に確認しておきましょう。
ストレート通貨(ドルストレート)
ストレート通貨とは、米ドル/円、米ドル/ユーロなど、米ドルを含む通貨ペアです。「ドルストレート」と表現することもあります。
米ドルは「世界の基軸通貨」と呼ばれており、世界各国で行われている貿易や金融は米ドルで取引されています。各国の外貨準備高もドル建てが最大となっており、米国の経済政策や経済動向が為替相場に影響を与えるケースも少なくありません。つまり、ストレート通貨には、米ドルと「直接(ストレートに)」交換しているといった意味合いが含まれているのです。
クロス通貨
クロス通貨とは、ユーロ/円、豪ドル/円、ユーロ/ポンドなど、米ドルを含まない通貨ペアです。
FXでは、米ドルを含まない通貨ペアでも、世界の基軸通貨である米ドルを介して(クロスして)取引されます。たとえば「豪ドル/円」の場合、豪ドルと円を直接売買するのではなく、円を売って米ドルを買い、その後米ドルを売って豪ドルを買うといった流れで取引が行われます。したがって「豪ドル/円」の為替レートは「豪ドル/米ドル」のレートに「米ドル/円」のレートをかけて求めることが可能です。
このようにクロス通貨は、2つの異なる通貨ペアのレートを掛け合わせて算出するため「合成通貨」と呼ばれることもあります。
FXのメジャー通貨とマイナー通貨の違い
FXで売買される通貨は「メジャー通貨」と「マイナー通貨」に大きく分けられます。通貨の種類によって損益が変わる可能性もあるので、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
メジャー通貨
メジャー通貨とは、取引参加者・取引量が多い通貨を指します。
明確な定義はありませんが、一般的にメジャー通貨とされているのは以下の通貨です。
- 米ドル
- ユーロ
- 日本円
- 英ポンド
- スイスフラン
- 豪ドル
- カナダドル
メジャー通貨はスプレッドの幅も狭い傾向にあります。スプレッドとは買値と売値の差でFXにおける取引コストです。そのため、コストを抑えて取引したい場合にメジャー通貨を選択する人も多くいます。
また値動きが緩やかで、相場分析もしやすい傾向です。その反面、大きな収益を狙うにはある程度の利益を積み重ねる必要があります。
マイナー通貨
マイナー通貨とは、取引参加者・取引量が少ない通貨を指します。
一般的にマイナー通貨とされているのは、以下の通貨です。
- トルコリラ
- 南アフリカランド
- ブラジルレアル
- メキシコペソ
- 人民元
- 香港ドル
マイナー通貨は流動性が低いため、スプレッドの幅は広がりやすい傾向にあります。また、値動きが荒くなりやすいのも特徴です。
ただしその分、値動きを捉えられれば、短期間で大きな利益を狙うことも不可能ではありません。さらにスワップポイントによる収益も期待できます。スワップポイントとは、2国間の金利差によって得られる利益です。スワップポイントは高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売ると得られます。マイナー通貨は高い金利となっているケースも多く、買いポジションを保有している限り、毎日収益を得られる可能性があるのです。
FX初心者におすすめの通貨ペアの選び方
ここでは、FX初心者におすすめの通貨ペアの選び方を3つ紹介します。なお、初心者のうちは取引する通貨ペアをなるべく1つに絞りましょう。取引に慣れないうちに複数の通貨ペアに手を出しても、良い結果を得られない可能性があります。
取引量が多い通貨ペアを選ぶ
FX初心者は、取引量が多い通貨ペアを選んで取引しましょう。
取引量が多い通貨ペアは「買いたいときに買える」「売りたいときに売れる」状態となっているため、比較的値動きが安定しやすい傾向があります。また「窓」のような突発的な事象も生じにくいため、チャート分析を駆使できれば、相場の方向性を予測しやすいのも特徴です。
※窓とは、終値と始値が大きく開き、連続するローソク足の間に空間が生じる現象です。価格変動が激しい相場でしばしば見られます。
取引量が多い通貨ペアの代表例としては、米ドル/円・ユーロ/円・ユーロ/米ドルなどが挙げられます。これらは、マイナー通貨を含む通貨ペアと比べると急激な価格変動をする確率が低いため、リスクを抑えた運用ができるでしょう。
スプレッドが狭い通貨ペアを選ぶ
FX初心者は、スプレッドの狭い通貨ペアを選んで取引しましょう。
スプレッドとは買値(Ask)と売値(Bid)の差額です。たとえば、米ドル/円の買値が140.002円、売値が140.000円の場合には0.002円がスプレッドとなります。スプレッドはトレードの都度発生するため、実質的な取引コストにあたります。スプレッドが狭いほど、利益を得やすくなるのです。
スプレッドはFX会社や通貨ペアによって大きな違いがあり、一般的にメジャー通貨は狭くなっている傾向があります。そのため、米ドル/円・ユーロ/米ドルのように、通貨ペアの両方をメジャー通貨にすれば、スプレッドの幅が狭く、利益を出しやすくなるでしょう。
経済や金融政策などの情報を取得しやすい通貨ペアを選ぶ
情報を取得しやすい国や地域の通貨が組み合わされている通貨ペアを選んでおけば相場の変化に対応しやすくなるでしょう。
為替相場は、経済指標や金融政策、要人発言などによって大きく変動するケースがあります。
米ドル・日本円・ユーロなどのメジャー通貨であれば、通貨を発行している国や地域(アメリカ・日本・EUなど)の経済や金融政策に関する情報を、日本語で調べるのは難しくないはずです。しっかりと情報収集ができれば、トレンドの変化を掴み、利益を狙えるかもしれません。相場予測が難しいタイミングでは取引をしない、といった選択をとることもできます。
一方、マイナー通貨の場合、通貨を発行している国や地域に関する日本語情報を探すのが難しい場合もあります。マイナー通貨を発行している国は、政治や経済など国内の状況が不安定になっているケースも少なくありません。戦争やテロ、経済危機などが起きた場合には、スプレッドが広がりやすくなるため、情報をチェックせず安易に取引を進めてしまうと大きな損失を被る場合もあるでしょう。
FXの通貨ペアを選ぶ際に知っておきたいポイント
ここでは、FXの通貨ペアを選ぶ際に知っておきたいポイントを3つ紹介します。
通貨ペアによって、相関・逆相関の傾向が見られる
FXでは「相関関係」が存在している通貨ペアがあります。
相関関係とは、一方の変化が他方にも影響を与える関係です。たとえば「ある通貨ペアが上昇すると、別の通貨ペアも同様に上昇する」関係は正の相関関係、「ある通貨ペアが上昇すると、別の通貨ペアは下落する」関係は負の相関関係(逆相関)があるといえます。
正の相関関係がある2つの通貨ペアを同時に保有し、予測通りに価格が動けば、利益を最大化できるでしょう。正の相関関係がある通貨ペアとしては「米ドル/円」と「ユーロ円」などがあります。両方の通貨ペアで同時に買いまたは売りのポジションを保有し、予測通りに価格が動けば、両方の通貨ペアで利益を得られる可能性があります。
また、正の相関関係を利用して、1つの通貨ペアの値動きから別の通貨の値動きを予測することも可能です。たとえば正の相関関係がある「豪ドル/円」と「NZドル/円」において、豪ドル/円が上昇(下落)しているものの、NZドル/円はまだ上昇(下落)していない場合はのちにNZドル/円も上昇(下落)する可能性があると、予測できるでしょう。
負の相関関係がある2つの通貨ペアを同時に保有し損失を最小限に抑える、といった活用方法もあります。負の相関関係がある通貨ペアの代表例は「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」です。両方の通貨ペアを買いまたは売りのポジションで保有しておけば、どちらかが予測と違った値動きをしたとしても、一方の損失をもう一方の利益で相殺できる可能性が高くなります。
ただし、相関関係はあくまでも値動きの傾向の1つに過ぎません。絶対的なものではないので、盲目的に相関関係に頼った取引をしていると、思わぬ損失を被る可能性もあります。
実際に売買をする際は、相関関係以外にもさまざまな情報を分析し、総合的に判断する必要があるでしょう。
通貨の強弱を確認すると相場が分析できる
通貨ペア単位ではなく、ペアを構成する通貨単体の需給バランス(通貨の強弱)を確認することで相場を分析する手法があると覚えておきましょう。通貨の強弱に開きがある通貨ペアはトレンドが発生しやすくなると予測可能です。
たとえば米ドル/円を構成する「ドル」または「円」の通貨が単体でどの程度買われているか、売られているかを分析します。その結果、米ドルが買われている状況であれば「米ドルが強い」、米ドルが売られている状況であれば「米ドルが弱い」と表現します。もし米ドルが強く、円が弱い状況が続いていたら、米ドル/円で上昇トレンドが発生する確率が高くなると予測できるのです。
FX会社が提供している通貨強弱を一目で確認できるツールやサイトも活用すると、より精度の高い取引ができるかもしれません。
長期保有する場合はスワップポイントに注意する
スワップポイントは2つの通貨間の金利差を調整するために付与されたり、支払ったりする金額です。高金利通貨を買い、低金利通貨を売ればスワップポイントを得られます。
しかし反対に、低金利通貨を買って、高金利通貨を売る場合にはスワップポイントを支払わなければなりません(マイナススワップ)。
スワップポイントはポジションを保有したまま、日をまたぐ度に発生するものです。つまり、マイナススワップの状態で長期間ポジションを保有する場合、支払額が大きくなり、利益を出しにくくなる可能性があることに注意しなければなりません。
各通貨の金利は常に一定ではなく、変動し続けています。これまでスワップポイントを得られた通貨ペアが、マイナススワップに転じるケースもゼロではありません。
長期的にポジションを保有するなら、定期的に経済や金融に関するニュースをチェックして、金利差の動向を把握しておく必要があります。
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本番同様の為替レートと環境を利用できる「デモ取引」も用意されていますので、初心者でも練習してから本番のトレードに臨めます。
まとめ
FXにおける通貨ペアとは、売買する通貨の組み合わせを指します。米ドルを含む通貨ペアは「ストレート通貨(ドルストレート)」、含まない通貨ペアは「クロス通貨」と呼ばれるのが一般的です。売買する通貨はメジャー通貨とマイナー通貨の2つに大きく分けられます。
さまざまな通貨ペアを選んで取引できるものの、FX初心者の場合は「取引量が多い」「スプレッドが狭い」「経済や金融政策などの情報を取得しやすい」といった特徴を有する通貨ペアを選ぶほうが良いでしょう。
実際に取引する際は、通貨ペアごとの相関関係や通貨の強弱なども参考にすると、より精度の高い取引ができるかもしれません。また、長期保有する際はスワップポイントに注意するようにしましょう。
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