FXの取引高1位の通貨ペアは、当然米ドル/円ですが、第2グループとして人気のある通貨ペアの一つが英ポンド/円です。非常にボラティリティが高い通貨ペアであり、2016年のブレグジットに代表されるように、特殊要因で値動きが活発化する通貨でもあります。また、日本の仲値と同じような形でロンドンフィックスと呼ばれるイベントもあり、特に月末最終日のロンドンフィックスは非常に注目されています。
本記事では、ポンド/円の特徴や確認すべき経済指標やイベント、取引する際のポイントなどを紹介します。
FXのポンド円とは?
FX(外国為替取引)は、二か国の異なる通貨を組み合わせた通貨ペアを取引対象としています。ポンド/円は、イギリスのポンドと日本円を組み合わせた通貨ペアであり、「GBP/JPY」と表記されます。
第二次世界大戦前後までは世界の基軸通貨でしたが、その後、英国経済の衰退とともに、基軸通貨の地位を米ドルに取って代わられました。それでも、世界で4番目に取引の多い国際通貨とされています。また、日本円も世界で取引量が多い通貨であり、日本人にとってもポンド円は人気のある通貨ペアの一つです。これは、日本経済とイギリス経済の関係性や、両国の経済指標に対する関心などが影響しています。
FXで取引できるポンド円の特徴
ポンド/円の特徴としては、まずはボラティリティの高さが挙げられます。日本円を中心としたクロス円(ポンド/円など右側の通貨が日本円)は、基本的に同じ方向に動く通貨ペアであり、方向性があっていれば、ポンド/円で取引をすることで利益幅が大きくなる傾向があります。
ボラティリティが大きい
ポンド/円は主要な通貨ペアの中でも、投機的に取引されることが多い特徴があります。これは、ボラティリティが大きいことに起因します。ボラティリティとは、価格の変動率を指し、ポンド/円の場合は価格が急激に変動することを意味します。ボラティリティが大きいほど、価格の変動が大きくなるため、より大きな利益を狙うことができますが、同時に損失額も大きくなる可能性があります。つまり、ポンド円の取引は高いリターンを狙える一方で、それに伴うリスクも大きいということです。
クロス円と正の相関関係にある
ポンド/円はクロス円の通貨ペアの一つであり、一般的には正の相関関係が見られます。例えば、ユーロ/円や豪ドル/円などもクロス円と呼ばれる通貨ペアになります。ポンド/円はクロス円であるため、米ドル/円やユーロ/円などの他のクロス円と比較して、基本的には同じような動きを示します。
具体的には、米ドル/円やユーロ/円が上昇している場合、通常はポン/ド円も上昇する傾向にあります。これは、クロス円同士が相関関係にあるためです。しかし、必ずしも完全に同じ動きをするわけではなく、個別の要因によって異なる動きを見せることもあるため、この点は注意が必要です。
ほかの通貨ペアに比べてスプレッドが広い
ポンド/円は、他の通貨ペアに比べて一般的にスプレッドが広い傾向があります。GMOクリック証券が提供するFXネオではポンド/円のスプレッドが0.9銭、米ドル/円のスプレッドが0.2銭で提供しているため、0.7銭の差があります。スプレッドとは、買値と売値の差額を指し、この差額が取引コストとなります。
FX業者によってスプレッドは異なりますが、ポンド/円のスプレッドが米ドル/円などに比べて広いという傾向は一般的に認識されています。これは、ポンド/円のボラティリティが高いため、ボラティリティが安定している米ドル/円などと比較すると、相対的にスプレッドが広くなります。ただし、ボラティリティが高いということは、スプレッドが広いけれども値動きが大きいということでもあるため、一長一短のある通貨ペアとなります。
ただ、ポンド/円を取引する際にはスプレッドが米ドル/円などと比較すると広いことに注意する必要があります。取引コストを最小限に抑えるためには、適切なスプレッドを提供するFX業者を選択することが重要です。
スワップポイントが大きい
ポンド/円は、大きなスワップポイントが発生するため、スワップ収益狙いの取引に向いています。スワップポイントとは、通貨ペア二か国間の金利差調整分を指します。高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売る取引によってプラスのスワップポイントを受け取ることができ、これが利益となります。逆に、低金利の通貨を買い、高金利の通貨を売る取引では、マイナスのスワップポイントが発生し、これが損失となります。
現状ポンド/円の場合、イギリスのポンドは高金利通貨の一つであり、日本円は低金利通貨の一つであることから、ポンド/円の取引では、買いでポジションを保有することでスワップ収益を受け取ることができます。
FXのポンド円相場に影響を与える経済指標・イベント
冒頭で説明したブレグジットのようなイベントはそうそうありませんが、定期的にポンド/円の動きに影響を与える経済指標、イベントはいくつか予定されています。次章では、定期的に発表され、値動きに影響を与える経済指標、イベントを紹介します。
GDP
GDP(国内総生産)は、一定期間内に国内で生み出された財とサービスの付加価値の総額を表します。この指標は国の経済規模を測る重要な指標であり、投資家や市場参加者にとって大きな動きを期待する指標の一つです。
GDPが予想値を上回ると、その国の経済が強いとみなされ、通常はその国の通貨が買われます。逆に、GDPが予想値を下回ると、経済が弱いと見なされ、通常はその国の通貨が売られます。
イギリスと日本の両国のGDPについても市場参加者は注目し、それぞれのGDPが発表されるタイミングでは大きな相場変動が起こる可能性があります。したがって、GDPの発表時には市場の動向に注意が必要です。
BOEの政策金利
BOE(Bank of England)は、イギリスの中央銀行であり、具体的にはイングランド銀行を指します。イギリスの政策金利は、BOEの金融政策委員会(Monetary Policy Committee、MPC)によって決定されます。
政策金利は、国内の金融市場や経済に影響を与える重要な要素であり、FX相場にも大きな影響を与えます。政策金利が引き上げられると、その国の通貨が魅力的になり、需要が高まります。逆に、政策金利が引き下げられる場合、その国の通貨は売られやすくなります。そのため、BOEの政策金利決定はFX取引において特に注目すべきポイントになります。また、金利高になるということは日銀が低金利を続けている以上、金利差が拡大することとなり、スワップポイントもポンド/円の買いポジションの場合は、より高いスワップポイントの受取りとなります。
日銀短観
日銀短観は、日本銀行が全国の企業経営者を対象に、自社の業況や経済の先行きについてアンケートを取り、その結果を集計したものです。この調査は、3ヶ月ごとに行われ、現状の景況感と今後3ヶ月の見通しについて調査します。具体的には、毎年4月、7月、10月、12月に発表され、業況判断指数(DI)が注目されます。
日銀短観の結果が良好である場合、つまり企業の景況感や経済の見通しが良好である場合、通常は円高の方向に影響します。一方で、結果が悪い場合、つまり景況感や見通しが悪化している場合、通常は円安の方向に影響します。日銀短観は日本の経済状況や企業の信頼感に関する重要な指標であり、その結果が円相場に与える影響は大きいとされています。したがって、投資家や市場参加者は日銀短観の結果に注目し、それを取引の判断材料として活用します。ポンド/円として見る場合は、日本の経済指標にも注目しましょう。
日銀金融政策決定会合
日銀金融政策決定会合は、日本銀行が日本の金融政策を決めるための重要な会合です。通常、年に8回開催され、本会合では、日本銀行が金融政策の方針や措置を決定します。会合当日の正午前後に結果が発表され、政策発表の後、午後3時半には総裁による会見が開かれます。
日銀金融政策決定会合や総裁会見は、市場参加者や投資家にとって重要なイベントです。政策決定や総裁会見での発言内容は、市場の見方や将来の経済見通しに影響を与える可能性があります。そのため、結果発表や総裁会見を受けて、為替相場や株価などの市場が大きく変動することがよくあります。
投資家やトレーダーは、日銀金融政策決定会合や総裁会見を注視し、市場の動向を読み取るための重要な情報源として活用します。日銀金融政策決定会合は、市場の不確実性を高めることもありますが、同時に取引機会を提供するため、クロス円の取引をする投資家の方であれば、何よりも注目すべき経済指標となります。
要人発言
要人発言は、経済政策や金融政策を担う各国の首脳や政府の高官、中央銀行の総裁、それらの関係者などの発言を指します。これらの要人は、市場参加者にとって重要な情報源であり、彼らの発言は市場に大きな影響を与えることがあります。
経済指標のような数値・データが発表される場合と同様に、要人の発言内容も市場に影響を与えます。例えば、金融緩和の継続を示唆したり、金融緩和の縮小を示唆したりする発言は、市場の予想や動向に大きな影響を与えることがあります。市場参加者は、要人発言を注意深く監視し、その内容やニュアンスを解釈して市場の動向を予測しようとします。特に、中央銀行の総裁や政府高官の発言は、その国の経済政策や金融政策の方向性を示唆するものであり、市場の動向に大きな影響を与える可能性があります。したがって、要人発言は市場参加者にとって重要なトレーディングの機会や与える一方で、リスク要因ともなるため、カバーすべきイベントになります。
FXのポンド円を取引する際のポイント
ポンド/円を取引する際のポイントとしては、やはりロンドンフィックスをどのように消化するかが重要です。特に月末のロンドンフィックスの値動きは非常に大きなものになることが事前にわかっているため、市場の注目も高いものになります。次章では、このロンドンフィックスについての解説を行います。
ロンドン時間からのトレンド発生に注意する
ポンド/円を取引する際には、欧州勢が活発化するロンドン時間からの値動きに注意する必要があります。ロンドン時間は、日本時間で17時から翌日3時(夏時間の場合は16時から翌日2時)までの時間帯に相当します。
ポンドという通貨に関しては、日中は方向感のない値動きになっていても、ロンドン市場が開くとトレンドが発生する場合があります。ロンドン市場は世界最大規模の外国為替市場であり、欧州勢の取引が集中するため、取引量が増加し、価格の変動が活発になります。
ロンドン時間に発生したトレンドは、その後の22時からのニューヨーク時間でも継続されることが多いため、逆張りする場合は損失が大きくなるリスクがあります。したがって、ポンド円を取引する際には、特にロンドン時間の値動きを注視し、トレンドの発生や方向性を把握しておくことが重要です。
ロンドンフィックス(ロンドンフィキシング)の値動きを狙う
ロンドンフィックス(ロンドンフィキシング)は、ロンドン市場で金融機関が外貨取引の基準レートを決める行為を指します。これは、日本の「仲値」に相当し、ロンドン市場での外貨取引の基準となるレートを決定する時間帯です。具体的には、日本時間の午前1時(夏時間は午前0時)に決まります。
ロンドンフィックスの時間帯は、外貨取引の基準レートが決まるため、市場参加者の取引が活発になります。このため、値動きが激しくなり、スキャルピング(短期取引)で利益を狙うのも良いタイミングとされています。
ただし、月末や月初のロンドンフィックスの時間帯は、大口の売買が行われる傾向があります。そのため、通常よりも相場が荒れやすくなります。このような時期は、投資家が慎重に取引を行う必要があります。大口の取引による価格の急変動が発生する可能性があるため、リスク管理が特に重要です。
必ず損切りポイントを決める
ポンド/円は、ボラティリティが大きい通貨ペアです。1時間で1円(100pips)を超える値動きも珍しくないため、取引時には大きなリスクが伴います。このようなボラティリティの高い市場では、ポジションを適切に管理することが非常に重要です。
ボラティリティが高い通貨では、損切りをしなければ1回の取引で大きな損失を出してしまう可能性があります。そのため、ポジションを作る際には損切りポイントを決めておくことが重要です。これにより、含み損を抱えてロスカットされるリスクを回避できます。
損切りの設定を管理するかどうかが、トレードの成否に大きく関わってきます。したがって、投資家は損切りの重要性を理解し、常にリスク管理を意識して取引を行う必要があります。
クロス円の値動きを確認して取引する
ポンド/円を取引する際には、他のクロス円との相関関係を考慮することが重要です。ポンド/円の取引において特に重要な相関関係を持つ通貨ペアの1つがユーロ/円です。
ユーロ/円の動向を確認することで、ポンド/円の取引における方向性を見極めることができます。特にイギリスは地理的にユーロ圏と近く、政治や経済などで関係性が高いため、ポンドとユーロは特に相関性が強いと考えられています。
例えば、ユーロ/円が上昇している場合は、ポンド/円も上昇する傾向にあります。逆に、ユーロ/円が下落している場合は、ポンド/円も下落する傾向にあります。このように、クロス円との相関関係を考慮しながらポンド/円の取引を行うことで、トレードの方向性を合わせることができます。特にユーロ/円の動向を確認することで、ポンド/円の相場の流れをより正確に把握することができます。
まとめ
FXのポンド/円は、イギリスのポンドと日本円を組み合わせた通貨ペアで、「GBP/JPY」と表記されます。この通貨ペアはボラティリティが高く、短期間で大きな値動きを見せることがあります。そのため、利益を狙いやすい一方で、損失も大きくなりやすいリスクがあります。投資家は損切りを適切に実行するなど、リスク管理に注意を払う必要があります。
ポンド/円を取引する際には、経済指標や要人発言など、市場に大きな影響を与える要因に注目することも重要です。例えば、イギリスや日本のGDP、中央銀行の政策金利決定などが挙げられます。これらの情報は、市場の方向性やトレンドを理解する上で役立ちます。
総括すると、ポンド円の取引は高いリターンが見込める反面、リスクも大きいため、慎重な取引が必要です。市場の動向や重要なイベントに敏感に反応し、リスクを管理しながらトレードを行うことが成功の鍵となります。
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