FX取引には、大きな利益を狙う手法のひとつに「逆張り」があります。逆張りは、トレンドの転換を予測して取引を行うことで高いリターンを期待できる反面、相場が予測とは反対の動きをした場合には大きな損失を被る恐れもあります。そのため、確かな根拠をもって取引することが重要です。ここでは、逆張りの特徴や、エントリータイミングを見極める方法、さらに役立つインジケーターや注意点などを詳しく解説します。
FX取引における逆張りとは
逆張りとは、相場のトレンドにあえて逆らった取引をする手法のことを指します。例えば、下降トレンドのときに「買い」、上昇トレンドのときに「売り」の取引を行います。相場が下げ止まる底値を予測して買い注文を出す場合には、その後の上昇局面で大きな利益を狙える可能性があります。
しかし、もちろん購入後にさらに価格が下落することもあり、そのような場合には大きく損をしてしまう危険性もあるため、慎重な分析と迅速な判断が求められます。そのため、逆張りは難易度が高めの取引手法と言えます。
順張りとの違い
逆張りと対照的な取引手法として「順張り」があります。順張りは、現在のトレンドに沿って取引を行う方法で、FX取引において一般的に用いられる手法のひとつです。具体的には、上昇トレンドの時に買い注文を行い、下降トレンドの時に売り注文を行います。
順張りはそのときのトレンドに合わせて取引をすればよいので、比較的売買のタイミングがわかりやすく初心者でも取り組みやすいのが特徴です。また、トレンドが長期にわたるほど大きな利益が期待できます。
ただし、価格が上がり切ったタイミングで買ってしまうと、その後すぐに値下がりしてしまい、損失を被る可能性もあるので注意が必要です。
FX取引で逆張りをするメリットとデメリット
逆張りにも他の手法と同じように、独自のメリットとデメリットがあります。それらを理解して、より効率的な逆張りを行いましょう。
逆張りのメリット
- 取引できるタイミングが多い
逆張りのメリットのひとつに、取引機会の豊富さがあります。逆張りはトレンド相場だけでなく、一定期間、価格が上下を繰り返すレンジ相場のときでも有効な手法のため、エントリー機会がより多くあります。 - 大きな利益を狙える可能性がある
大きな利益を狙える可能性がある
逆張りの真髄はトレンドの転換点、つまり相場の初動を捉えることにあります。これが成功し、相場が予測した方向に動けば大きな利益を得られることもあります。
トレンドの終点を上手くつかんでポジションを取ることができれば、短期的な利益を狙える可能性もあります。
逆張りのデメリット
- 売買のタイミングが難しい
逆張りのデメリットとして、適切な売買のタイミングを見極めるのが難しいという点があげられます。それは、逆張りではトレンドの終点を正確に見抜く必要があるからです。
しかし、予測を誤り価格が反転しなかった場合には、そのまま上昇や下落を続け、損失が発生するリスクが高まります。
- 大きな損失を被る可能性がある
相場が想定と異なる動きをした際、損切りのタイミングを事前に決めておかないと損失が急速に膨らむ恐れがあります。特に、高いレバレッジで取引を行う場合、ロスカットに抵触する危険性もあります。
FXの逆張りのエントリータイミング
逆張りを成功させるためには、エントリーのタイミングが非常に重要となります。ここでは、逆張りのエントリータイミングを3つ紹介します。
レンジ相場の安値・高値の時
レンジ相場とは、一定の値幅（レンジ）内で価格が上下に推移している相場のことをいいます。このようなときは明確な上昇トレンドや下降トレンドが形成されにくい傾向にあります。
レンジ相場には、複数の安値を結んだ「サポートライン」と、複数の高値を結んだ「レジスタンスライン」が存在します。サポートラインはレンジ相場の底を表し、レジスタンスラインは天井を表しています。
これらのラインは、価格がそのラインを突破しにくいという特徴があり、サポートラインやレジスタンスラインに近づいた局面で逆張りを仕掛けることが有効的です。
価格がサポートラインに近づいたときは、その後価格が反発して上昇する可能性が高いため、買いのエントリーチャンスとなります。反対に、価格がレジスタンスラインに接近した際には売りのエントリーチャンスとなります。
ただし、サポートラインやレジスタンスラインは、あくまで過去の価格データに基づいて引かれたラインであり、必ずしも価格がそのラインで反転するとは限りません。そのため、他のテクニカル指標や経済指標なども判断材料にして、レンジが突破される可能性も念頭に置いておく必要があります。
買われすぎ・売られすぎのどちらかに行き過ぎている時
FX市場における基本原則のひとつに、「価格は常に平均に回帰する傾向がある」というものがあります。価格は上昇しすぎるとその後下落し、反対に下落しすぎると、その後上昇する傾向にあります。この現象は、市場の自然な調整メカニズムとして機能しています。
このように、チャートが極端な状態に達したときを逆張りのエントリータイミングにするのも有効的です。具体的には、「買われすぎ」、つまり価格が上昇しすぎているときに売り、「売られすぎ」、つまり価格が下落しすぎているときに買いのエントリーを行います。
相場の急変動が起こった時
FX市場では、様々な要因によって相場が短時間で急変動することがあります。特に、要人の発言や重要な経済指標の発表時などは、相場の急変動が発生する可能性が高くなります。
急変動が起こった際には、価格が極端な位置に達した後、その反動である程度元の価格帯に戻ってくることがよくあります。このような状況では、価格が急激に動いた後、動き切ったタイミングでエントリーし、価格が戻ってきたタイミングで利益を確定することが有効です。
相場の急変動は短時間で発生するため、素早く判断し、行動する必要があります。そのため、常にチャートを監視し、状況の変化に迅速に対応できる体制を整えておくことも重要です。
FXの逆張りに役立つインジケーター
インジケーターとは、チャート上に様々なグラフやラインを表示させて相場分析をサポートしてくれるツールのことです。
逆張りでは、トレンドの転換をいち早く予測することが重要となるため、多くのトレーダーはインジケーターを活用して、より正確な予測を試みています。今回は数あるインジケーターの中から、特に逆張りに役立つものを3つご紹介します。
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは、トレーダーに広く利用されている指標のひとつです。米国の投資家ジョン・ボリンジャー氏によって考案されたことが名前の由来になっています。
ボリンジャーバンドは移動平均線、そして標準偏差を用いて計算された上下2本ずつの線によって価格帯が示されています。標準偏差とは、ある一定期間のデータの平均値から、そのデータがどのくらいのばらつきを持っているのかを計算した数値です。標準偏差が大きければデータのばらつきが大きく、小さければばらつきが小さいことを意味します。よって、ボリンジャーバンドの上下のバンド幅が広いほど、価格変動の度合いが高く、バンド幅が狭いほど、価格変動の度合いが低いと言えます。
トレーダーにとって特に注目すべきは、バンドの形状の変化です。上下のバンド幅が拡大している状態を「エクスパンション」と呼び、そこからバンド幅が狭くなり収束している状態を「スクイーズ」と呼びます。このエクスパンションからスクイーズへ移行するタイミングでトレンドが変わりやすい傾向にあります。大きなトレンドの変化が起こりうることもあるので、逆張りでエントリーする場合は価格の推移に注視しておくのがよいでしょう。
MACD
MACD（Moving Average Convergence Divergence）は通称「マックディー」で、日本語では「移動平均線収束拡散」とも訳されます。移動平均線を改良したもので、よりトレンドの転換を明確に分析するために用いられるテクニカル指標です。MACDの特徴は、期間の異なる２つの移動平均線の価格差を利用して、相場のトレンドの強さや方向を分析することができる点にあります。
MACDは、「MACD線」と「シグナル線」という２本のラインによって構成されています。MACD線は、短期の移動平均線と長期の移動平均線の差を1本の線で表したものであり、シグナル線はMACD線の値をある短期間で平均した値です。
この２本のラインの交差により、売買のタイミングを判断することができます。MACD線がシグナル線を下から上に抜けた場合は「ゴールデンクロス」と呼ばれ買いのサインとなります。反対に、上から下に抜けた場合は「デッドクロス」と呼ばれ売りのサインと判断するのが一般的です。例えば、下降トレンドが続いていた相場でMACD線がシグナル線を下から上に突き抜けた場合、それは相場のトレンドが下降から上昇へと転換する可能性を示唆しています。
RSI
RSIはRelative Strength Indexの略で、相対力指数のことを指します。相場の過熱感を判断するためのテクニカル指標で、特に「買われすぎ」や「売られすぎ」を見極める際に便利です。RSIは、過去一定期間の値上がり幅と値下がり幅の比率を基に算出されます。チャート上で0〜100％の範囲で表示され、一般的には70％以上になると買われすぎ、30%以下になると売られすぎの状態にあると判断されます。つまり、70％以上の買われすぎている時には売り、一方30％以下の売られすぎている時には買いのエントリー機会になると言えるでしょう。
FXで逆張りする際の注意点
逆張りは、大きな利益を狙える一方で、大きな損失も発生しやすいハイリスク・ハイリターンな戦略です。大きな損失を出さないためにも、いくつかの注意点を押さえておきましょう。
感覚で取引しない
相場の値動きは非常に複雑で多くの要因が影響を与えるため、直感だけで取引を行うと失敗するリスクが高まります。そのため逆張りをする際は、様々な角度から分析し、見通しを立て、確かな根拠を持って判断することが重要です。
具体的には、MACDやRSI、ボリンジャーバンドなどのテクニカル指標を参考にしながら、値動きの過熱感やトレンドの転換点をデータに基づいて捉えることが重要です。
逆方向に相場が動いてもポジションを追加しない
FX取引において、相場が想定とは反対方向に動くことも珍しくありません。大切なのは、相場が逆方向に動いたからといって、安易にポジションを追加しないことです。
保有している通貨の価格が下落したときに、さらに追加でポジションを買い増しすることでその通貨の平均取得単価を下げるという戦略があります。これを「ナンピン」と言います。漢字では「難平」と表記され、難は損のことを指します。その損を平均化するという意味から難平（ナンピン）と言われています。
例えば、Aの通貨を100円で数量100購入した後、価格が80円まで下落した場合、さらに数量100を購入します。すると、平均取得単価を90円に下げることができ、利益を出せる水準が下がることになります。しかし、買い増しした後も価格が下がってしまえば、損失はさらに膨らみ、ナンピン買いは失敗となってしまいます。
含み損が発生している状況でポジションを増やすということは、そのまま損失が拡大していくリスクを高めることに繋がるので注意が必要です。
損切りラインを決めておく
FX取引では、相場分析をどれだけ徹底しても予測どおりの値動きになるとは限らないということを、経験あるトレーダーは良く知っています。市場の状況は常に変化しており、思わぬ方向へ動くことも頻繁にあります。したがって、損失を抑えるために、時には損切りを決断することも必要です。
損切りとは、持ち続けることで損失が拡大する可能性のあるポジションを早めに売却し、損失を最小限に抑えることをいいます。これは一見、損失を認めるという点で心理的に難しい決断にも思えますが、実際には大きな損失を防ぐための賢明な判断です。
損失を拡大させないためにも、取引を開始する前にあらかじめ損切りラインを設定しておくことが重要です。「エントリー価格から○○%下落したら損切り」といったルールを具体的に設定しておけば、感情に左右されず冷静に損切りを実行することができるでしょう。
また、逆指値注文とも呼ばれる損切り注文を設定しておくのも効果的です。これは、指定した価格まで値下がりした時点で自動的に保有していたポジションが売却される注文方法です。チャートを常に監視していなくても、設定した価格で売却されるため、損失を一定の範囲内に抑えることができます。
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逆張りはトレンドの転換を予測して、現在のトレンドとは逆方向の取引を行い、大きな利益を狙う取引手法です。上手くいけば大きな利益を得られる可能性がある反面、予測を見誤ると大きな損失を被るリスクも孕んでいます。
したがって、逆張りを行う際は、感覚だけで取引するのではなく、様々な角度から相場を分析し、根拠を持って取引することが大切です。テクニカル分析やファンダメンタルズ分析を駆使して、トレンドの転換点を見極めるように心がけましょう。
また、大きな損失を防ぐためには、事前に損切りルールを設定しておくことも重要です。相場が想定とは逆方向に動いたときに備えて、あらかじめどの価格帯で損切りするかを決めておくことが、感情に流されずに冷静に判断することに役立ちます。
このようにFX取引を行う際は、様々なインジケーターを使用して分析を行い、チャートを見たいときに見ることができる環境にしておくことが重要です。
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